第8病棟(認知症急性期治療病棟)では非薬物療法のひとつとして回想法に取り組んでいます。今月は水書道を行いました。
水書道とは、水で書けて何回でも乾かして練習できる台紙で行う書道です。筆は書道用のものを用います。墨汁ではなく水を使用するので、衣服などを汚す心配がなく片付けも簡単です。感染対策を行い実施しました。
書道が好きな患者様は、筆を持つと自然と背筋を伸ばされてどんどん書き始められます。お手本としては「せせらぎ」「夏まつり」など季節を感じられることばを用意し、現実見当識訓練も兼ねています。はじめは遠巻きに見ていた患者様も、水が乾くと消えてしまうのを見て、気軽に参加されました。
認知症急性期の患者様は、ご自分の病状や環境の変化から不安感でいっぱいの方が多くいらっしゃいます。「恥をかきたくない」という気持ちから消極的になったり、拒否的になったりされる方がいらっしゃいます。そのような患者様もつられて参加され、体が覚えていることに取り組み、自分らしさや小さな自信を取り戻していただくことをねらっています。
今回も「あなた上手ねぇ」など、お互いに筆跡を褒め合って楽しい時間となりました。「久しぶりに筆を執り緊張しました」「こんどは墨汁でやりたい」などの声があがりました。

回想法:懐かしい題材から話題を提供し、思い出したことを語り合って共有して頂きます。人生をふりかえり、自分を肯定的に受け止めることができるよう、ゆるやかに促して気持ちの安定を図ります。
現実見当識訓練(リアリティ・オリエンテーション):日時、季節、場所、人物などに関する情報を意識的に確認する機会を設けて、現実認識を取り戻す訓練です。今、どこで何をしているのかに注意を向けていただき、混乱をやわらげます。