Ⅲ.認知症 第10回 「こんな時、どうすればいいの?」

前回に引き続き、認知症に関することをお話していきたいと思います。

今回のテーマは、「症状が見られた時の対応方法について」です。

いままでのコラムの中でお話していたように、認知症の症状には、「中核症状」と「行動・理症状(周辺症状)」があります。症状が出現しても日常の中でも生活に大きな支障が見られなければ問題は無いのですが、症状がみられることで、思いもしなかった苦労をするかもしれません。

中核症状は脳の細胞が壊れることにより出現する症状です。

記憶障害、見当識障害、実行機能障害、失行、失認、失語などの症状が複合的に現れ、徐々に進行していきますが、現れる症状や出現順などには個人差があり、認知症の種類によっても異なります。

症状によっては家族が困ってしまうこともあります。

また本人もそうした症状のせいで、困っている状態でもあります。

中核症状では、もの忘れの症状が中心のため、ご家族様の認知症への理解や、生活のサポートがあれば在宅での生活は可能です。日中は仕事のため本人が1人になってしまう場合は、デイサービスを利用するなど、ご家族だけでは対応が困難であれば、介護保険サービスを利用してみるのが良いでしょう。

中核症状は一度進行してしまうと、回復することが難しいとされています。

そのため今後は症状の進行を緩やかにすることが重要になります。

他の人とのコミュニケーションの場を設ける、体を動かす機会を作る、

頭を使うことをする、生活リズムを整えるなど、日々の生活内容の改善も大事になります。必要に応じて専門の機関に相談することも必要です。医療機関ではもの忘れの進行を遅らせる薬などもあります。

周辺症状は、全ての認知症の方にみられる症状ではありません。

認知症の中核症状に対する不安や、受け止め方によって生じるものであり、その人の性格や生活環境によって症状や程度は異なります。

「物を盗まれた」と騒いでしまう、幻覚や妄想がみられる、大声で怒鳴りつける、物を投げることや手をあげてしまう、こうした様子が目立つようになってきてしまうと、同居の家族の負担が大きくなってしまいます。

こうした症状は、他の人から指摘を受けたからといって治るものではありません。

場合によっては生活に支障をきたすことや、本人や家族が怪我をしてしまう可能性もあります。

中核症状が治りにくいのに対し、周辺症状は薬などによって症状を落ち着くこともあります。ご本人のためにも、できるだけ早期に専門治療を開始し、治療の結果から本人にとって良い生活を検討していくことが必要となります。

最後まで、読んでいただきありがとうございます。

認知症に関する相談は、戸田病院 認知症疾患医療センターでもお受けしております。

お電話でのお問い合わせも可能ですので、お気軽にご相談下さい。

〇お問い合わせ・相談先

戸田病院 認知症疾患医療センター

℡:048-433-0090

Mail:ninchishou-center@koujinkai.or.jp

ホームページ:https://ninchi-center.jp

Ⅲ.認知症 第9回 「認知症のBPSD(周辺症状)って聞いたことありますか?」

前回に引き続き、認知症に関することをお話していきたいと思います。

今回のテーマは、「認知症でみられる症状 ~行動・心理症状(周辺症状)~」です。

認知症でみられる症状は、「中核症状」と「行動・心理症状(周辺症状)」に分けることができます。今回は、その中でも行動・心理症状についてお話をいたします。中核症状については、前回の記事で説明していますので、よければご一読ください。

認知症の行動・心理症状(BPSD)は周辺症状とも呼ばれており、中核症状が元となって、行動や心理症状に現れるものです。本人の性格や環境、心理状態によって出現するため、人それぞれ個人差があります。病気をよく理解して適切に対応したり、リハビリなどを行うことで、改善する場合もあります。


図にもまとめてみましたが、行動・心理症状には以下が含まれます。

・徘徊:家の中や外を絶えず歩き回る

・妄想:現実には起きていないことを信じて疑わない

・幻覚:現実にはないものが見える幻視、聞こえる幻聴がある

・不安・焦燥:強い不安、イライラ

・抑うつ:気分の落ち込み、意欲の減退

・食行動異常:食べられないものを食べようとする

・睡眠障害:昼夜逆転、早朝覚醒など

・介護抵抗:介護されることを嫌がる

・暴言・暴力・攻撃性:強い怒りを見せたり、手をあげたりする

行動・心理症状の出現には、冒頭でもお話しましたが個人差があります。周囲が適切にサポートすることや本人が安心して生活できるような工夫をしてあげることで、症状が改善することがあります。

行動・心理症状が出現する原因が介護する側にあることもあります。何度も同じ事を聞かれると介護する側は「またか」という気持ちになり、イライラして「さっきも言ったでしょ」など、本人とっては大事なことだから、聞きたかったのに、強い口調で返されたり、そっけなくされると不安が強くなったり、逆に怒りの感情が強くなったりなど、行動・心理症状の悪化につながります。

大事な予定はみんなで見れるカレンダーに書いておく、ご本人の話を最後まで、真剣に聞くことができるように、自分の気持ちに余裕を持つ、余裕が持てるように適切に介護サービスを導入する。といったことが大切になります。

最後まで、読んでいただきありがとうございます。

次回の内容は、「症状が見られた時の対応方法について」です。

認知症に関する相談は、戸田病院 認知症疾患医療センターでもお受けしております。

お電話でのお問い合わせも可能ですので、お気軽にご相談下さい。

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Ⅲ.認知症 第8回  認知症の症状は物忘れだけじゃない

前回に引き続き、認知症に関することをお話していきたいと思います。

今回のテーマは、「認知症でみられる症状 ~中核症状~」です。

認知症でみられる症状は、「中核症状」と「行動・心理症状(周辺症状)」に分けることができます。今回は、その中でも中核症状についてお話をいたします。

認知症の原因となる病気によって脳細胞が壊れることにより、脳の機能が阻害されて発生する症状のことを「中核症状」といいます。

中核症状は以下の症状が含まれます。

  • 記憶障害:新しいことを覚えられない、前のことが思い出せない
  • 見当識障害:場所や時間、季節や曜日がわからない
  • 実行機能障害:段取りができない、計画が立てられない
  • 失行:服の着方がわからない、道具がうまく使えない
  • 失認:物が何かわからない、人が誰だかわからない
  • 失語:物の名前が出てこない など

こうした中核症状は一度機能が低下してしまうと、元通りの機能に回復することは難しくなります。今起きている症状が治療できる病気であるかもしれないですし、認知症の薬を飲むことによって、今より症状の進むペースを遅らせる、緩やかにすることができる可能性があります。そのため、認知症の治療では「早期受診・早期診断」が大切です。

最後まで、読んでいただきありがとうございます。

次回の内容は、「認知症でみられる症状 ~行動・心理症状~」です。

認知症に関する相談は、戸田病院 認知症疾患医療センターでもお受けしております。

お電話でのお問い合わせも可能ですので、お気軽にご相談下さい。

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Ⅲ.認知症 第7回  認知症には原因となる病気がある

前回に引き続き、認知症に関することをお話していきたいと思います。

今回のテーマは、「認知症の原因となる病気」です。

認知症の原因となる病気と、認知症のような症状をみせる病気があります。

  • アルツハイマー型認知症
  • 脳血管性認知症
  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症

アルツハイマー型認知症は聞いたことがあるという人も多いかもしれません。

認知症の中でもアルツハイマー型認知症が多いと言われています。

認知症のような症状をみせる病気としては、

・正常圧水頭症

・慢性硬膜下血腫

・脳腫瘍

・クロイツフェルト・ヤコブ病

・ビタミンB12欠乏症

・甲状腺機能の低下 など

たくさんの原因となる病気がありますが、原因となる病気の治療が速やかにおこなうことができれば、症状が改善する可能性があります。

病気によっては治療することもできますし、認知症の進行を少しでも遅らせることが出来るように、早めに相談や受診をすることをおすすめいたします。

最後まで、読んでいただきありがとうございます。

次回の内容は、「認知症の症状について」です。

認知症に関する相談は、戸田病院 認知症疾患医療センターでもお受けしております。

お電話でのお問い合わせも可能ですので、お気軽にご相談下さい。

〇お問い合わせ・相談先

戸田病院 認知症疾患医療センター

℡:048-433-0090

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Ⅲ.認知症 第6回  認知症のこと、どのくらい知っていますか?

2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人は認知症になると見込まれています。

認知症は今後ますます、家族や知り合い、友人、そして自分自身とだれがなってもおかしくない身近なものとなっていくと思います。

自分自身や家族が認知症と診断されたとしても、よりよく生活していくために認知症のことを知っておきませんか?認知症に関することを数回に分けてお話したいと思います。

まず、第1回は認知症とは、どんな状態なのか、定義をお話したいと思います。

認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(おおよそ6カ月以上継続した状態)を指します。

認知症と一言でいっても、認知症の原因となる病気、認知症に似た症状を表す病気があります。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回は、認知症の種類についてお話ししたいと思います。

認知症に関する相談は、戸田病院 認知症疾患医療センターでもお受けしております。

お電話でのお問い合わせも可能ですので、お気軽にご相談下さい。

〇お問い合わせ・相談先

戸田病院 認知症疾患医療センター

℡:048-433-0090

Mail:ninchishou-center@koujinkai.or.jp

ホームページ:https://ninchi-center.jp

Ⅲ.認知症 第5回 認知症の方を支援するために ~認知症サポーターになりませんか~

認知症サポーターとは、認知症サポーター養成講座を受講し、

認知症について正しい知識を学び、理解し、地域で生活する認知症の方やその家族を

できる範囲内でサポートするというものです。

認知症サポーターに期待されることは以下の通りです(厚生労働省のHPより)。

1.認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない。

2.認知症の人や家族に対して温かい目で見守る。

3.近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する。

4.地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる。

5.まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する。

認知症の国家戦略である新オレンジプランでは、

2017年度末までに800万人を認知症サポーターとして養成する計画でした。

結果として、

2017年度末には目標を大きく超えた1000万人の方が認知症サポーターとなり、

2020年6月末時点では、1200万人を超える方々が認知症サポーターとなっています。

埼玉県内でも、現在では53万人を超える人たちが

認知症サポーターとして各地域で認知症の方を見守り、手を差し伸べるなど、

地域で安心して生活できるような環境作りを目指しております。

埼玉県内で53万人と言われると多いと思われがちですが、

それでもまだ人数は足りていません。

戸田病院 認知症疾患医療センターでも認知症サポーター養成講座を開催しております。

当センターのホームページやお住いの市町村のホームページや広報などで開催についてのお知らせが出ています。ぜひ、一度確認してみてください。

●お問い合わせ

戸田病院 認知症疾患医療センター

℡:048-433-0090

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Ⅲ.認知症 第4回 在宅介護をする家族について

認知症の方の在宅介護では、家族だけで抱え込んでしまうケースが多くあります。

在宅介護を行う場合、相談できる場所を作ることが大切です。

例えば、担当のケアマネージャーや地域包括支援センター、かかりつけ医などです。

介護を続けていくと、その時々で問題となる言動や分からないことも出てきます。

誰かに相談しながら介護をすることで、

問題を家族だけで抱え込まず、周りの人と協力でき、

より良い生活を維持していくことに繋がります。

認知症が進行していくと、認知症の方の言動で困ることもあります。

症状を理解し、正しい接し方を知っておくことで、

何かあっても慌てることは少なくなるでしょう。

また、介護者の方が一息つき、リフレッシュする時間はとても大事な時間です。

「自分は大丈夫」と思っていても、思っている以上にストレスや疲労は溜まっていきます。

介護者の方に何かあれば、介護自体に影響が出てしまいますので、

無理をせず周りの人と協力し合える環境を心がけましょう。

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Ⅲ.認知症 第3回 外で困っている方を見つけた場合

認知症の方に接する際には、

1 まずは見守る

2 余裕をもって対応する

3 声をかけるときは1人で

4 後ろから声をかけない

5 相手に目線を合わせてやさしい口調で

6 おだやかに、はっきりした滑舌で

7 相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する

以上の7つのポイントを押さえましょう(認知症サポーター養成講座標準教材より)。

困っていそうな高齢者の方が居たら、まずは様子を見てみます。

様子を見ることで、こちらが落ち着く時間にもなり、余裕を持って接することができます。

焦っていたり、キョロキョロしていたり、不安そうであったり、

その方の様子に違和感がありましたら、声をかけてみて下さい。

声をかける時は1人で、正面から近づきながら声をかけます。

はっきりとした言葉で「どうしました?」「何かお手伝いしましょうか?」と、優しく声を掛けましょう。

相手が話してくれるようであれば、最後まで話をしっかり聞いてあげて下さい。

認知症の方の場合、人とのコミュニケーションに過敏になっていることもあります。

無理に気になることを聞き出そうとせずに、ご本人の様子を見て下さい。

何か連絡先が分かるような物を、ご家族が持たせているかもしれません。

もし何も分からないのであれば、市区町村の高齢書支援課や、地域包括支援センターなどを頼って下さい。

●お問い合わせ

戸田病院 認知症疾患医療センター

℡:048-433-0090

Mail:ninchishou-center@koujinkai.or.jp

Ⅲ.認知症 第2回 認知症の方との接し方

認知症の方と接する際には、認知症についての正しい理解が必要です。


記憶があやふや

苦手なことが増えた

同じことを何度も聞いてくる

こうした症状が「なぜその様な状態なのか」と分かれば、

何かあったときにスムーズに接することができます。

接する際に気を付けて欲しいことは

・驚かせない ・急がせない ・自尊心を傷つけない という点です。

お話しをする際は

本人の視界に入ってから話すようにする

次々に質問をしない

同じことを聞いたなど、否定的な言動をしない

などの点に気を付けてみて下さい。

ご本人は理解に手間取ってしまったり、焦ってしまいます。

また、認知症の方は話の内容を忘れてしまっても、

その時の感情やマイナスイメージは残ってしまうそうです。

「どうせ忘れてしまうから」と思わず、

正しく理解し、良い接し方を実践できれば、接する方の負担も減るはずです。

●お問い合わせ

戸田病院 認知症疾患医療センター

℡:048-433-0090

Mail:ninchishou-center@koujinkai.or.jp

Ⅲ.認知症 第1回 認知症疾患医療センターへ相談できること

自分自身やご家族、友人、近所の人などの様子が気になる

という相談を受けることがあります。

たとえば、

・同じ話を何度もしている

・約束したことを忘れてしまう

・物をどこに置いたか分からなくなる

・日時や季節の感覚がおかしい

・着るものや身だしなみに無頓着になった

・家事ができなくなった

・趣味に興味がなくなった

・怒りっぽい

・無いものが見えると言う

「もしかしたら認知症かも」と思った時に、

どこに相談すれば良いのか迷うことがあるかもしれません。

認知症疾患医療センターでは、

こうした様々な「もの忘れ」、「認知症かも」といったような

困ったことについて相談することができます。

本人や家族だけで抱え込まず、気になったら一度連絡をしてみて下さい。

「いつから」「どういう様子」など、お話をお聞かせいただき、

認知症疾患医療センター職員との面談、外来への受診や相談機関などをご案内いたします。

〇連絡先

戸田病院 認知症疾患医療センター

Tel:048-433-0090 (直通)   Fax:048-433-0091   月~土曜日8:45~17:00まで

ものわすれ外来は、月~土の8:45~11:00、水曜日は午後も診療しています。

面談やものわすれ外来の受診につきましては、

事前に認知症疾患医療センターまでお電話をしていただけると、

当日スムーズにお話ができます。