2023-08-01

第3病棟 統合失調症の慢性期と急性期の違い

統合失調症とはどんな病気がご存じでしょうか?精神科の病気と聞くと心の病気といったイメージが強く「心が弱い人がなる」など間違った偏見が生まれやすい背景があります。実は統合失調症は脳の病気であり遺伝も伝播もしません。解明されていない部分も多いですが原因は不明と言われています。近年患者数も増えている傾向です。これは精神疾患への関心が社会的に高まっていることも関係しているかと思います。

統合失調症の症状は、急性期と慢性期に分けられます。急性期では、幻覚や妄想などの陽性症状(後述)があらわれ、症状が安定してくる慢性期になると、陰性症状(後述)があらわれてきます。当然、治療法も違ってきます。

今回は、急性期と慢性期をキーワードに統合失調症の治療について説明します。これは統合失調だけではなく、広く病気一般について使われる医学用語です。急性期とは、症状が急激に現れる時期のことを指します。病気になり始めの時期と言ってもいいでしょう。

慢性期とは、病状は比較的安定してきているが、完全に治っているわけではなく、治療が続いている時期のことです。慢性期では、再発を予防すること、また身体機能の維持・改善を目指すことを基本に長期的な治療が行われます。

第3病棟は慢性期病棟です。急性期が過ぎたあとの休息期、回復期(慢性期)の後にでてくる症状が陰性症状を抱える患者様がほとんどです。慢性期の治療は、薬物療法と並行して認知療法や社会復帰に向けたリハビリなどが行われます。あらわれる陰性症状とは、感情や意欲や集中力が低下した症状です。喜怒哀楽が乏しくなり、だらだらとした無気力、無関心状態に陥ります。

一方で口数も少なくなり、思考力が低下して、会話がなりたたなくなってきます。急性期の症状にくらべると、一見穏やかな症状ですから、傍から見ると、単に怠けているだけのようにもみえますが、まだまだ病気の途中だと理解してあげることが重要です。慢性期になると、薬物療法のほかに患者の社会生活をサポートする心理社会的療法や認知行動療法などが行われます。嵐のような急性期の症状が収まると、休息期とも呼ばれる時期に入ります。この時期は、感情や身体のエネルギーが不足しているためにもたらされた外見的には穏やかな時期です。しかし、まだ不安定な精神状態にあり、ちょっとした刺激が誘因となって、急性期に逆戻りしやすい時期でもありますから、注意が必要です。

こうして、回復期とよばれる時期を迎え、徐々に治っていき、入院生活から自宅療法に切り替わり、家族や周りの人のサポートで社会復帰を目指すことになるのです。

やがて、症状が落ち着き、陽性症状も陰性症状も消えいきます。しかし、統合失調症は再発しやすい病気ですから、服薬は続けて行きます。

統合失調症は、再発の危険がある病気なので、長期間にわたって服薬を続けることが重要です。服薬の期間は、初発の人で1年、再発・多発の人で5年が目安とされています。統合失調は不治の病ではありません。症状がおさまったあとも長い服薬期間がありますが、きっちりと薬を飲み続ければ、十分直しうる病気です。

精神分裂病という恐ろしげな名前で呼ばれていた時期には、この病気にかかると人柄が変わるとか、不治の病、などといった誤った言説が流布していました。しかし、医療技術の進歩で新しい薬の開発が進み、心理社会的ケアも充実してきています。楽観は禁物ですが、病気と向き合って、治療を怠らずに取り組めば、道は開けてきます。