目次
- Ⅰ.統合失調症
- 第1回 統合失調症とは①
- 第2回 統合失調症とは②
- 第3回 統合失調症の治療
統合失調症は、脳機能のバランスが崩れた結果、現実を正確に把握することや感情・意欲のコントロール、適切な人間関係を保つことが困難になる病気です。
統合失調症の主要な症状としては、一般に①陽性症状、②陰性症状、③作業能力の障害の 3つがあげられます。
①陽性症状
陽性症状とは、幻覚、妄想、解体した会話(支離滅裂な内容、頻繁に脱線する会話など)や興奮状態が現れることです。このうち、幻覚と妄想は統合失調症の特に代表的な症状であることから詳しく説明します。
幻覚とは現実にはないものを認識することです。とりわけ多いのは実際には音が 存在しないのに音が聞こえる「幻聴」です。何かを命令する声や、あるいは複数の人が会 話していて自分の悪口や批判を言っているのが聞こえてくるのが典型例です。「おかしな服を着ている」「今トイレに入っている」などのようにまるで監視されているかのような 声が知覚されるケースもあります。
一方、妄想とは、あり得ないことを根拠もなく信じ込んでしまっている状態です。妄想のタイプは様々ですが、その内容に応じて❶被害妄想、❷関係妄想、❸誇大妄想、❹微小妄想、❺身体妄想、❻妄想性人物誤認に分けることが可能です。
❶被害妄想とは、自分やあるいは身近な人に対する悪意が妄想の中身となっている場合です(例「命が狙われている」)。
❷関係妄想とは、自分に無関係な周囲の人の言動やテレビ等で見聞きした出来事が自分 に対して関係のあるものと強く思い込むことです(例「テレビでアイドルが自分をばかにして笑っている」)。
❸誇大妄想は過大な自己評価が妄想の中身となっている場合です(例「自分は王家の末裔だ」)。
❹微小妄想は誇大妄想とは逆に、過小な自己評価が妄想の中身となっている場合です(例「自分はごみのような人間だ」)。
❺身体妄想は、自分の身体が他の人に比べてどこかおかしい、劣っているなどと思い込む妄想です。
❻妄想性人物誤認は、近親者などよく知っている人が瓜二つの別の人物に入れ替わったと信じるなど人物に関する誤認を内容とする妄想です。
②陰性症状
陽性症状が今までにはなかった症状が起こるのに対して、陰性症状では逆にこれまではあったものがなくなる、もしくは乏しくなることになります。
❶感情の平板化
喜怒哀楽など自身の感情表現が乏しくなったり、物事に適切な感情がわきにくくなります。また、他者の感情表現に共感することも少なくなり、相手の気持ちに気づかなかったり誤解したりすることが多くなります。
❷意欲の減退
物事を行ううえで必要となる意欲がなくなってしまいます。たとえば、仕事や勉強をしようとする前向きな気持ちがなくなったり、入浴や着替えなど日常的な行動にも関心をもてなくなります。
❸思考内容の貧困
会話の量や中身が乏しくなったり、返答が遅れたり、話にまとまりがなくなったり、無口になったりします。
③作業能力の障害は、具体的には「記憶力が減退する」「融通性が低下する」「了解が悪くなる」などといった形で現れます。認知機能障害を示します。①陽性症状と②陰性症状は薬によって治療することが可能であるのに対して、③作業能力の障害については、現状では薬だけで治すことは困難と見られています。