2021-11-19

Ⅰ.統合失調症 第2回 統合失調症とは②

目次

統合失調症の経過

統合失調症の症状の現れ方、治まり方には個人差がありますが、一般的な傾向としては、 以下のような経過をたどることになります。

①前駆期

統合失調症の前兆となる症状が現れる時期です。具体的には不安、緊張、不眠、集中力 困難、食欲低下、抑うつ気分などの症状が見られます。再発の前にも同様の症状が現れるので、この時期に早期発見、早期介入を行うことによって再発を予防することが重要になります。

②急性期

幻覚、妄想、思考の混乱、興奮など統合失調症の症状が強く現れます。本人には病識(自分が病気であるとの認識)がないのが特徴です。

③回復期

治療により精神状態が治まっている状態です。急性期に疲れた心身を回復させるための 充電期間といえるでしょう。

④慢性期

急性期の症状が治まった後も、陰性症状や作業能力障害は持続します。この慢性期には 社会生活への適応をめざしリハビリテーションを行うことになります。

「3つの分類」

症状や経過などを基準にして、統合失調症は「妄想型」「破瓜型」「緊張型」という3つのタイプに分類されてきました。

「妄想型」は、妄想や幻覚が中心となり、発病年齢は、やや高い傾向があります。

「破瓜型」は、思春期から青年期にかけ発病し、陰性症状が強まる点に特徴が見られます。

「緊張型」は、若いときに急激に現れ興奮状態や昏迷状態を示します。治療を受けることで 早期の回復が期待できると考えられています。

「統合失調症の原因」

なぜ、統合失調症になるのか ―  その発症のメカニズムについては様々な 説が唱えられていますが、現在最も支持されているのは「ドーパミン仮説」です。

脳が活動するためには、神経伝達物質と呼ばれる化学物質が神経から神経へと情報を伝えていくことが必要となります。その神経伝達物質の1つに、快楽や興奮状態を生み出す働きをして いるドーパミンがあります。このドー パミンの分泌が過剰になることなどによって脳の機能障害が生じ、幻覚や妄想などの統合失調症の症状が現れると考えられています。

「発症要因」

前述したような脳内の異常が引き起こされるのはなぜなのかという統合失調症が発症す る要因についても、研究者の間では議論と研究が行われてきました。主な発症要因としては、以下のように①遺伝、②環境、③ストレスなどがあげられています。

①遺伝

一親等血縁者に統合失調症の人がいる場合、いない場合に比べて統合失調症になる危険率が5~10倍以上になるとの報告があります。また、一卵性双生児の場合、一方が統合失調症となるケースでは、他方の発症率は50%、二卵性双生児の場合は、17%というデータもあります。もっとも、一卵性双生児の場合でも、50%は統合失調症にならないということは、「統合失調症になるかならないかは、遺伝的な要因だけでは決まらない」という事を意味します。

②環境

体質といった生物学的な環境や生まれ育った状況・背景などの社会的な環境も影響をも たらします。たとえば母親が妊娠していたときにウイルスに感染したり栄養不足だった人 や、冬に生まれた人は発症率がわずかに高いともいわれています。

③ストレス

統合失調症の患者さんの中には、過剰なストレスが長い間続いたり、強いストレスがかかったことが、発症のきっかけとなった人が少なくありません。