今回は、当院認知症病棟で週に1度行なっている集団精神療法の活動をご紹介します。
このプログラムでは、季節のお話や歌、クイズ等を通して、患者様が楽しみながら認知機能の維持や改善、意欲の向上を目指すことを目的としています。
毎月第1週目は季節にちなんだ歌を歌う会です。6月は「雨降り」「かたつむり」「夏は来ぬ」を歌いました。参加した患者様からは「子どものころ歌った」「なつかしい」そんな声が聞かれました。また、季節の歌謡曲として「高原列車は行く」も歌いました。歌詞の中には、“汽車”“牧場”“山越え谷越えはるばると…”等の言葉がちりばめられており、どこか遠くへ旅に行きたくなるような、そんなイメージが広がります。歌い終えた後、この歌にちなんで「皆さんだったらどこに旅に行きたいですか?」と質問しました。すると、「最近全然帰っていないから北海道」「行ったことないから九州」「沖縄」「ハワイ」「ヨーロッパ」、中には「家がいい」としみじみと仰る方もいらっしゃいました。また、歌の情景から子どもの頃に訪れた思い出の地について語って下さる方もいらっしゃいました。歌っている時だけでなく、考えを巡らせている時の患者様方の、わくわくしたような、穏やかな表情がとても印象的でした。
このようなアプローチは、回想法という心理療法の一つになります。昔を回想できるような懐かしいものに触れ、思い出を語り合ったり、誰かに話したりすることで、脳が刺激され、当時の記憶がよみがえってきます。それに伴い情緒が活性化したり、精神状態を安定させたり、認知機能の維持や改善を期待できると言われています。
認知症病棟で行なうプログラムでは、このようなアプローチも取り入れながら、日々活動しています。