1970年代に、米国の臨床心理士マーシャル・B・ローゼンバーグによって体系化されたコミュニケーション手法です。自らの内面に意識を向ける事で、支配や対立、緊張といった関係性から互いを尊重し、つながりを深める関係性のへの変容を目指します。具体的には「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」という四つのフェーズをもとにコミュニケーションを図ります。
言葉には力があります。しかし、時にその力は対立や衝突をもたらします。誰しも自分が正しいと思いたいもの。理論武装してどのように相手を言い負かすかを考え、その結果消耗してしまうのです。対話が大切だと頭では分かっていても、価値観の異なる人と向き合うことは簡単なことではありません。
「非暴力的コミュニケーション」はその名称の通り、自分の内外に平和をつくるプロセスです。どちらか一方の正しさを証明するのではなく、互いの感情やニーズを大切にしながら、両者ともに願いを叶えることを目指します。
互いを尊重するコミュニケーションをとるために、NVCには「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」という4ステップがあります。
「観察」のフェーズでは、主観を取り払い、何が起こっているかをありのままに見ます。「相手は怒っている」と思っていても、それは自分の印象に過ぎないかもしれません。一切の評価をせず、状況を事実として把握することが最初のステップです。
次に「感情」。大人になると、多くの人は感情を抑えて話すようになります。怒ったり泣いたりしてネガティブな感情を出すことは良くない、と認識している人も多いでしょう。しかし、自分のニーズを知ることができるため、感情はとても大切です。
「ニーズ」は言い換えると、自分が何を大切にしたいか。ニーズを言葉にして伝えることは、実りあるコミュニケーションにつながります。例えば、「報・連・相」が苦手な部下に「社会人として未熟だ」と叱責するよりも、「相談してほしかった」「一緒に考えたかった」と自分のニーズを伝えたほうが、相手から共感を得やすくなります。
最後の「リクエスト」は、明らかになったニーズを叶えるために相手にしてほしいことを伝えます。ただし、ニーズを押し付けたり、強要したりしてはいけません。このフェーズでは、相手の感情や相手のニーズにも意識を向ける必要があります。
NVCは日本ではまだなじみがありませんが、職場だけでなく、家族や友人関係にも応用することができます。一朝一夕で身につくものではありませんが、こうしたコミュニケーションを意識的に繰り返すことで、自分も相手も大切にした意思疎通ができるようになります。