2024-02-20

『集団プログラムを始めるにあたって大切にしていること』

これまでもいくつかご紹介してきましたが、当院では入院患者さんを対象に集団精神療法、SST、心理教育プログラムなど、心理士の関わる集団プログラムを複数行っています。いずれのプログラムも、症状を改善させるだけでなく、退院後を見据えて、その症状とうまく付き合いながら日常生活を送られること、また、自己実現を図れるよう、自己理解とコミュニケーションスキルを向上していくことを目指しています。そのため、必要に応じて他職種と連携しながら集団内での個々の特性を見極めつつプログラムを進めています。

特に個で関わる場合と違い、集団内では緊張や不安が高まることが予想されます。個を好む患者さんにとっては集団という場が余計に苦痛になることもあるでしょう。しかし退院後日常生活、社会に戻っていくには、ある程度人とのやりとりが必要となります。人はより安心できる空間と時間を得ることで初めて安心して自己表現することができます。またそこで正のフィードバックが加わることでありのままの自分を出すことに安心感を覚え、可能性を広めていくことができます。これは入院中の患者さんに限られたことではなく、日々の生活で当たり前のことなのですが、この当たり前を特に大切にしたいなのです。

その1つとして集団プログラムを始める際、いきなり本題から入るのではなく、準備や場を温める時間を大切にしています。例えば自己紹介したり、簡単なゲームをしたり。一見プログラムの内容とは全く関係ないように見えても、その時間はただ準備をしたり、場を温めているだけではなく、その時間や機会を共有しながら、お互いの息づかいを無意識に確かめ合っています。「●●さんは今日ちょっと元気ないかな」、「今日は調子よさそうかな」。私たちも日常で何気なく、人に声をかけた時に、その人と自分の息づかいを確かめて調整したりしながら、安心感や一体感を得るのと同様です。

プログラム開始時にこの調整と安心感や一体感を築いていけるよう、ちょっとした工夫や配慮を通して、“集団”という小さな小さな社会の輪にいざない、日常生活へ戻っていく後押しができればと考えています。